対談

佐藤 綾乃(さとうあやの)日本スケート連盟 ナショナル強化選手
佐藤 綾乃(さとうあやの)

日本スケート連盟 ナショナル強化選手。北海道帯広市を活動拠点とし、チームパシュート競技ではオリンピック平昌大会で金、北京大会で銀と2大会連続でメダルを獲得。北京大会1500m競技では4位入賞も果たしている。

参加者

「MIRAI MEAT(ミライ・ミート)」 2022応援メンバー
柴田 さくらこさん / 内山 和奏さん / 榎本 悠人さん / 長 疾風さん

ニチレイフレッシュ社員とそのお子様
田中さんご家族 / 辰巳さんご家族

佐藤 綾乃選手と対談の様子

佐藤選手と「MIRAI MEAT(ミライ・ミート)」 2022応援メンバー

— 佐藤選手、ご参加の皆さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

佐藤選手:
皆さんこんにちは。佐藤綾乃です。本日はよろしくお願いします。

— 皆さんに先立ちまして、司会者から佐藤選手に最初の質問をさせていただきます。
佐藤選手が“世界”を意識し始めたのは、いつ頃なのでしょうか?

佐藤選手:
きっかけは、2017年、私が20才の頃にスピードスケートのナショナルチームに参加したことですね。いろんな大会を経験して世界が見えてきた、世界に近づけたなって感じたときに、“世界のトップ”を目指すようになりました。

— では参加されている皆さんに「夢」について聞いてみたいと思います。
柴田さんから順に、現在お持ちの夢をお聞かせください。

柴田さん:
レスリングで4連覇、メダルを4個とることです。

内山さん:
近い夢は今年の夏にあるU-13世界大会で優勝することで、大きな夢は日本人で初めて近代5種競技の頂点に立つことです。

榎本さん:
僕がやっているフリースタイルスキーのスロープスタイルという種目で、スポーツの祭典X-Gamesに出場してメダルを取ることです。

長さん:
若いうちにサッカー日本代表になって世界で活躍することです。

佐藤 綾乃(さとうあやの)日本スケート連盟 ナショナル強化選手

— 次に佐藤選手への質問に移りたいと思います。
皆さん、佐藤選手に聞いてみたいことはありますか?

柴田さん:
競技中はどんな思いで滑っていますか。

佐藤選手:
そうですね、私はレース中にいろいろ考えすぎるのは良くないと思っているので、自分が思い描くレース通りになるよう、競技中はそのことだけに集中して滑っていますね。

内山さん:
ケガや故障しないために、普段の生活や食事で気をつけていることを教えてください。

佐藤選手:
私は、皆さんと同じ年齢の頃からお風呂上りのストレッチを毎日欠かさずやっていました。昔は体が硬かったのですが、今は柔軟性がある体になったおかげで、大きな怪我をしたことがありません。特に股関節の柔軟性を上げるのは、どの競技においてもすごく大切なことだと思うので、ぜひ股関節を中心に体全体の柔軟性を上げてください。
また食事については、本当に基本的なことなのですが1日3食の食事を毎日しっかり摂ることを心がけています。休みの日でも練習がある日でも朝・昼・夕食をバランスよく食べることは何歳でも大切だと思うので、ぜひそれを心がけてほしいと思います。

内山さん:
あともう一つ質問があります。
練習前後の補食について、佐藤選手の場合は何を食べているか教えてください。

佐藤選手:
夏の間はトレーニング量がかなり多くなってくるのでカロリーの多いものを摂取しています。中でもバナナはおすすめですね。いろいろなタイプの栄養補助食品がありますけど、エネルギー源にもなるしお腹の持ちもすごくいいので、バナナが一番だと思っています。

佐藤 綾乃(さとうあやの)日本スケート連盟 ナショナル強化選手

— お肉はアスリートにとってとても大事な食事だと思うのですが、
お肉の食事について気をつけていることを佐藤選手にお聞きしたいと思います。

佐藤選手:
カラダづくりにおいて、タンパク質が大切な栄養素の一つであるということは、皆さん理解されていると思いますが、お肉などのタンパク質を摂るときに気をつけてほしいことが2つあります。
まず一つ目は朝・昼・夕食のうち1回の食事でたくさんのタンパク質を摂っても、体に結びつく力が大きくなるわけではないということを知っておいてほしいです。1日3回の食事でなるべく同じ量ずつ分けてタンパク質を摂ることで、しっかり体と結びつくと言われています。
また、とくに朝食でのタンパク質不足が、多くの選手に見られがちです。同じナショナルチームの選手の話を聞いていてそう感じたことがありました。朝食の摂り方が今後のカラダづくりでとても大切になりますので、皆さんももう一度朝食の内容を見直してみてほしいと思います。
もう一つはお肉などのタンパク質を摂取するときは、糖質とマグネシウム、ビタミンB群も一緒に摂るとより効果的に体に結びつくと教わりました。それらが不足するとせっかく摂ったタンパク質が体の中で分解されてしまうので、例えば糖質だったらお米に、マグネシウムだったらワカメやひじき、緑色のお野菜に多く含まれていて、ビタミンB群では特にビタミンB6がパプリカやブロッコリーに多く含まれているようなので、それらを一緒に食べるようにしましょう。

榎本さん:
お肉の話が出ましたが、佐藤選手の一番好きなお肉は鶏・牛・豚のうちどれですか?

佐藤選手:
そうですね、私は牛肉が一番好きですね。(笑)

榎本さん:
二つ目の質問ですが、苦手な食べ物を克服するときに大切だと思うことは何ですか?

佐藤選手:
私も苦手な食べ物がたくさんあります。例えばお刺身や梅干しがちょっと苦手で、食べるのに困ってしまうときもあるんですけど、でも例えば、その梅干も疲労回復に良いと聞くと、やっぱり自分の体を強くするため、いたわるためだと思って我慢しながら食べています。あとは自分が好きなものに混ぜて食べるという工夫などもしていますよ。

長さん:
試合前のルーティンとかってありますか。

佐藤選手:
一つ挙げるとすると、レース前はスーツを着てスケート靴を履いて、レースのだいたい10分前ぐらいに氷の上でアップをして・・・、という流れになるんですけれど、私はいつもスケート靴を履き終わって氷に乗る前に目を閉じて胸の前で手を組みながら、「私はできる、私は一番強い、私はスーパースターだ」って自分に言い聞かせるようにしています。

田中さん:
1日にどれくらい練習をしているんですか?

佐藤選手:
私は夏の間はロードバイク(自転車)トレーニングをメインにしていて、冬になると氷上トレーニングが入ってくるのですが、そのメインとなるロードバイクトレーニングは、長いときで4時間くらいずっと漕ぎっぱなしというときもあります。
短い間隔で繰り返すインターバルトレーニングというきついメニューもやるのですが、例えば1分間4セットでそれを5セットやります。氷上トレーニングは1日にだいたい2時間くらい、休みながら取り組んでいます。

辰巳さん:
スピードスケートの魅力って何ですか。

佐藤選手:
スケートの魅力は、やはりタイムを競う競技なので、最初から最後まで何が起こるか本当にわからないですし、選手がゴールラインを切るまで勝敗がわからないっていうのがすごく楽しめるポイントの一つでもあります。あと車と同じくらいのスピードを体感することができるので、その速さというのもスケートの魅力の一つなのかなと思います。

佐藤 綾乃(さとうあやの)日本スケート連盟 ナショナル強化選手

— ご家族のサポートについてもお聞きしようと思います。
佐藤選手も今まで家族のご支援があって競技を続けてこられたと思うのですが、アスリートにとって家族がどんなサポートをしてくれると良いのでしょうか?

佐藤選手:
まずアスリートの親御さんとして、特にお子さんたちにどんな食事を出せばいいのか不安になられる方も多いのではないでしょうか。でも私が経験してきて思ったのは、「食事があるだけでもすごく嬉しい」ことですし、何よりお父さんお母さんと一緒に食事をすることがすごく楽しいと感じていたので、すべてが揃った完璧な食事をしなくても、そんなに思い詰める必要は無いと思います。
あとはお子さんたちとの毎日のコミュニケーションがすごく大切だと思っています。何か特別なことをしなくても、毎日いろんな話をする中で子供たちの現状や気持ちを知ることができますし、「お父さんお母さんも一緒に頑張っているよ」ということを伝えることもできると思います。ふとしたときに何か一言伝えてあげるだけで、誰よりも強い味方がいると知ることができ、子供たちの力になるのではないでしょうか。

— 親御さんの方から、佐藤選手に聞いてみたいことはありますか?

田中さん(親):
いつもご活躍を拝見しております。いつもハードな練習をされていらっしゃると思いすが、練習と休みをどのようなバランスで取り入れたら良いのでしょうか?

佐藤選手:
ナショナルチームに入ってからは、まるまる休みになる日が月に2、3回あるくらいなんですね。私が小・中学生の頃は月曜日から土曜日まで練習をして、日曜日に休むというのがだいたいの流れでした。
ただ私は小学生の時は夏にバスケ、冬にスケートをやっていたので、ほとんど休みがない状態で動き回っていました。練習することがすごく好きでしたから、小学生の頃はそれほど休んでいなかったのを覚えていますね。でも休まずに練習をやり続けるのは体の負担になるので、最低でも週に1日の休みは大事にした方がいいと思います。

辰巳さん(親):
記録が伸びないとかスランプになるときが必ずあると思うんですけど、そういうときの克服方法について、参考になることがあれば教えていただきたいと思います。

佐藤選手:
2019年のシーズンに大きいスランプがあって、私のスケート人生において一番沈んでしまったシーズンでした。成績的にも気持ち的にも落ちこんでしまったんですけど、そのときに改めて大切だなと思ったのが周りの人たちの存在でした。
スランプの時は私1人だけで解決できない問題がたくさんあって、トレーナーさんはじめ、チームメイト、コーチの皆さんが状況を把握してサポートしてくださいました。励ましの言葉もたくさんもらっていて、「大丈夫、綾乃ならできる」っていう言葉を本当に多くの方々からかけていただきました。
中でも両親の存在は一番大きく、私がどれだけ努力してきたか理解していますし、「あなたは心の強い子だよ」という言葉をかけてくれたことがあって、やっぱりそういう言葉を聞くと、落ち込んでいては駄目だなって思いましたね。
現在20人ちょっといるナショナルチームですが、全員と言っても過言ではないくらいスケーティングに関しても食事の面でも、またプライベートのときも、皆さんが助けてくれていました。例えば技術の面だったら「今の綾乃の滑りはこうなっていて、良いときの滑りとは全然違うよ」っていうふうに自分で気付ける言葉がけもしてくれましたし、食事の面だったら栄養士さんに「こういう食事を食べると元気も出るしエネルギーも湧いてくるよ」って言葉をもらいました。
1人のためにこんなに周りの人たちが考えて、助けてくださったという経験をすることが今まで無く、そういった方々がいることの有り難さを一番感じたので、結果で恩返しをしたいなって思えたことが、落ち込んでから上に這い上がるまでの自分の気持ちの変化だったのかなって思います。

— 最後になりますが、佐藤選手から本日対談に参加された感想を聞かせてください。

佐藤選手:
今日対談を始める前に皆さんの戦績を見させていただきましたが、どの方も私が小・中学生の頃より素晴らしい成績を収められていて、大変驚かされました。実際にこうやって話してみて、皆さんの大きな目標と競技に対する熱意を感じることで、私自身がやる気をもらえたというのが正直な感想です。
皆さんからいろいろな質問があり私が答えていく中で、改めて考えさせられたこともありましたし、食事に関しても気をつけていこうと思いました。まだこの先世界のトップで、もっと上で戦っていきたいと改めて思えたので、私の方から皆さんに感謝したいです。ありがとうございました。

佐藤 綾乃(さとうあやの)日本スケート連盟 ナショナル強化選手

佐藤選手、ご参加の皆さま、親御さん、本日はどうもありがとうございました。
ご参加された皆さんは、今日のお話をそれぞれの生活にぜひお役立てください。